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粘土乾燥時の割れ・傷を治す唯一の方法

2019/10/18
粘土乾燥時の割れを治す方法

陶芸を始めて経験する厄介な事象は、「粘土乾燥時に発生する作品の割れ・傷」ではないでしょうか? 今回は、その作品の割れや傷を治す唯一の方法をご紹介いたします。 ずばりその方法は「毛細管現象」と言われる物理現象を利用した修繕方法になります。 「毛細管現象」と言ってもピンとこない方も多いと思いますが・・・背の高い大きな樹木の細い枝先にまで水分が運ばれる現象と言っても良いと思います。 ストローで水分を吸い上げても・・・何十メートルも吸い上げることはできませんが・・・毛細管と呼ばれる細い管を介すと、遥か高い樹木の上まで水分が運ばれる理屈です。 今回の投稿では、原理そのものはさて置き・・・いかにして粘土乾燥時の割れやヒビを治していくのか? に絞ってお話を進めますね。

 

写真はカップをロクロ挽きして乾燥させていた翌日・・・パックリとS字状に亀裂が入ってしまった状態です。 通常ですと・・・この時点で「お釈迦」です(泣)。 砕いて粘土に再生するのが大概のパターンですね。 ところが、実際には、時間をかけて作った苦労の作の大物の縁が最後の最後に割れたり・・・陶芸教室の生徒さんの悪戦苦闘した作品が翌朝割れていたり・・・「砕いて終了!」ってな訳にいかない場合も多々ありまして・・・なんとか再生させる方法がないか? と試行錯誤を繰り返していましたが・・・ある時に閃きました。 それが「毛細管現象」を使った修繕方法です。

 

経験的には、作品の割れを発見すると亀裂部分に素地と同じ粘土を擦り込んで・・・なんとかお茶を濁す訳ですが・・・そのやり方では大半は失敗いたします。 なんでかと言うと・・・ひび割れの末端は大きな割れ目となった亀裂ですが、その先は細い亀裂が内部にまで進んでいる場合が多く、目視できる範囲を粘土で埋めても・・・全然対応にはなりません。 治したと思っても、素焼きや本焼きをしたらバレバレで、さらに悪化した亀裂が発生している場合が大半かと思います。

 

そこで「毛細管現象」を利用した修正のお話になります。

粘土の「ドベ(粘土を水で溶いた液状の物体)」を作るのですが、なるたけ薄く溶いてサラッとした液体状にします。 その液体状のドベを筆にしみ込ませ・・・傷のある部分に滴下していきます。 あくまでも擦り込むのではなく、滴下して粘土素地に吸わせるイメージです。 1回目、2回目、3回目・・・と乾燥したら滴下を繰り返します。 最初は、パックリと開いていた傷口が徐々に閉じてきます(笑)。  まるで砂浜に押し寄せる波が、砂を少しづつ運んで来るように・・・徐々に亀裂を閉じてくれますね。

実は、これが「毛細管現象」そのもので、多孔質な粘土素地のミクロの穴が水と一緒に粘土粒子を運んでくれるので・・・時間はかかるものの・・・粘土素地の割れや傷を最深部から確実に治してくれます。 ただ実際は、粘土との我慢比べになります(笑)。 傷が残っているうちは、微小なクラックとして目視できますが・・・最後の最後に粘土が音を上げて傷が塞がります。 

たぶん理に叶った方法だと思われますが・・・根気と執念が必要ですね(笑)。

 

大切な作品を「お釈迦」にするも良し、時間をかけて修復するも良し・・・ご一緒に陶芸を楽しんでいきましょう。 長くなりましたが・・・ご確認ありがとうございました。