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ルーシー・リーのピンク

2019/08/13
ルーシー・リーのピンク

先ほど、ルーシー・リー展(2010年)の目録を観ていて、目を引いたページがあったのでブログの記事として投稿してみます。 それは、ルーシー・リーの1980年頃の作品と言われる「ピンク線文鉢」のページでした。多分どこかで写真を見たと思われる人も多いと思われますが・・・鮮やかなピンク色と独特の形状をした器です。 彼女は、確か93歳の生涯の間に、色々な焼き物作りにチャレンジしていますが、自分のスタイルを模索する中で、独自の作陶方法を推し進めて来た点に、すごく共感してしまいますね。その一例がピンク色の焼成です。 陶芸で上品なピンク色を出すのって・・・かなり難しい気がします。

 

写真の「ピンク線文鉢」は、説明文によると象嵌(ぞうがん)と言われる手法により焼成したとなっていますが、結構厄介な品物です。 要するに素焼きした素地の上に釉薬を塗って焼成しただけの単純な手法ではなく・・・粘土に金属で細いラインを彫り込み、その溝に色土を塗り込んで釉薬を掛けています。ですから、粘土の素地色、線刻に入った色土の色、釉薬の合わせ技であの品の良いピンク色が発色しているのですね。

さらに器の上部と下部のブロンズ色やその間にちょっとだけ顔を見せるグリーンとのマッチングが素晴らしさを格上げしています。

 

ルーシー・リーは釉薬ノートを相当数残していますので、その解読も進んでいるのでしょうが・・・どうも推察するには、透明釉に種々の金属を入れて、発色を確認するトライを相当な回数して行く中で、錫とかクロムを使って上品なピンク色を焼成していたようですね。それも全部電気窯による酸化炎焼成なんですよね。

 

さてさて、機会を作って・・・象嵌によるピンク色にチャレンジしてみたいものです。

やはり時代を超えて、綺麗なものはキレイですね。